緊張の夏

 全くもって予想していなかった。 自分の所には、いないものなのだと思っていた。
それよりも、私はKAの方に神経を使っていたのだ。

・・・そう、遂にGが出現したのである。
一昨日の夜、Gは意表をついた登場をした。
近眼に加え寝ぼけ眼の私にもはっきり分かる、あの圧倒的な存在感とフォルム。
見た瞬間、自分の全身の神経が逆立ったような気がした。
こういったピンチの時に、人間のサバイバル本能が目覚めると思う。
私は静かに眼鏡を取りに行き、殺虫スプレーを手に戻った。
極力スプレーを使いたくない場所であったが、もう四の五の言っていられない。
Gを逃し、日夜再会と増殖の恐怖に怯えるか、今ここで殺るかの二択しかないのである。

私は覚悟を決めスプレーを噴射すると、Gはとてつもなくすばやい動きで逃げ惑う。
Gに噴射しつつ私も後を追う。
そしてGは自ら排水溝に入った。
私はここぞとばかりにスプレーをぶっぱなし、周囲がモクモクと煙くなる。

しかし何ということでしょう!Gは死にません!
脳は指令を出した。
「YOUお湯かけちゃいなYO!」

何かで見た情報を脳は引っ張り出したようである。
目はGから離さず、フライパンで湯を沸かし、Gにかけた。
すると、Gはやっと動きを止めた。
戦いの決着がようやく着いた瞬間である。

ごめんね、G。
見た目の気持ち悪さだけならまだいいんだけど、君、一杯危ない菌媒介してるらしいよね?

さて、戦いの後は、閉会式である。
これも本番と同じ位過酷な、そう、後片付けだ。

思い出したくないので書かないですが、あれはきついですね。
もう二度とやりたくないです。
人生経験になったと言えばなったかもしれませんが、私の人生においては意味をなさない気がします。

かくして昨日は、今までで一番Gについて考え、調べ、その末にお勧め頂いたゴキブリキャップを買いに行った。
この商品は他より高く、1400円程。
教えて下さった方に「買います」と言った手前、他の商品に浮気するわけにもいくまい、と妙な律儀さを発揮しつつも、何でGにこんなにお金かけなきゃならないんだよ・・・と悔し涙をこらえながらレジに商品を持って行った。

帰って買った物を設置したけど、何だかGがいる気配がない。
もしかして、一昨日は一匹が迷い込んだだけだったのかなと思った所で、夜中私がぐーすか寝ている時に、我が物顔で部屋を歩き回るGの姿を想像してしまう。

迷い込んだだけにしたって、結局どこかから進入される所があるんだもんね、油断ならない!
ベランダにも屋外用のG対策の物を設置しようと思う。
安いホウ酸団子も買い、周辺にばらまこうかなと考えている。

こんな事に神経を使うことになるとは・・・

2013年、緊張の夏